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[FactCheck] 上田・立花両候補の選挙公報に不正確な言説あり! 〜検証・参院埼玉補選

[FactCheck] 上田・立花両候補の選挙公報に不正確な言説あり! 〜検証・参院埼玉補選

議員の辞職に伴う参議院埼玉選挙区の補欠選挙が10月10日に告示され、元埼玉県知事の上田清司氏とNHKから国民を守る党党首の立花孝志氏の2人が立候補した。両候補の選挙公報には、一部に正確さを欠く主張があった。それぞれの選挙公報のうち、検証可能な言説をファクトチェックして判明した。本記事では、8つの発言の検証結果を簡潔にまとめて報告する。(田島輔)

●上田きよし候補の選挙公報の検証

上田候補の選挙公報には「上田県政が変えた16年」と題して、知事時代の実績が6つ列挙されていた。これらを検証した結果は以下のとおり。

①「人口増加率3位」=正確

直近の国勢調査(2015年実施)では、2010年から2015年の都道府県別の人口増加率は、沖縄県が2.9%と最も高く、東京都(2.7%)が2位、埼玉県及び愛知県(1.0%)で同率3位。人口増加数も、埼玉県の7万2千人は、東京都(35万6千人)、神奈川県(7万8千人)に次いで3位であった。

②「1人あたりの県民所得増加額 1位…埼玉県は平成18年度から1兆1485億円、5.6%の増加。増加額で全国1位」=不正確

埼玉県の「1人あたりの県民所得増加額」は8万3千円、2.88%増で、全国17位だった。他方、県民経済全体の所得を表す「県民所得」は1兆1485億円増加し、増加額で全国1位だった(内閣府の県民経済計算、県民所得参照)。「1人あたりの県民所得増加額」は誤りで、正しくは「県民所得の増加額 1位」というべきだった(上田候補は政見放送でも同様に誤った発言をしていた)。

ニュースのタネ編集部は23日、上田候補の選挙事務所にこの点を指摘して見解を求めたが、24日までに回答はなかった(回答があり次第、追記する)。

③「県民総生産増加額名目 3位」=正確

埼玉県の県民総生産は、平成18年度から約7196億円、3.3%の増加で、増加額が全国3位であった(内閣府の県民経済計算、県内総生産(生産側、名目)参照)。ちなみに、3.3%の増加率でみると、3.3%は全国10位であった。

④「県内総生産実質 2位」=正確

埼玉県の県内総生産実質は、平成18年度から約1兆1156億円、5.4%の増加で、増加額が全国2位であった(内閣府の県民経済計算、県内総生産(生産側、実質:連鎖方式)参照)。ちなみに、増加率でみると、5.4%は全国9位であった。

⑤「県の借金 約2兆6千億円を1兆9千億円に、約7000億円減らす」=ミスリード

減収補填債、臨時財政対策債を除く県債残高は、上田県政の間に減少していたが、減収補填債と臨時財政対策債を含めた県債残高の総額は増加していた(一般会計県債残高の推移参照)。詳しくは、ファクトチェック記事「上田氏主張『県の借金減らした』はミスリード」で検証したので、参照されたい。

なお、ニュースのタネ編集部は23日、上田候補の選挙事務所にこの点を指摘して見解を求めたが、24日までに回答はなかった(回答があり次第、追記する)。

⑥「約18万件の犯罪を6万件に!」=正確

埼玉県の犯罪認知件数は、ピークの18万1350件(平成16年)から、6万1件(平成30年)に減少していた(埼玉県サイト:県内の犯罪情勢参照)。

●立花孝志候補の選挙公報の検証

①「…バブルが起こり、NHKは政治家に親しい政治部記者(島桂次元会長や海老沢勝二元会長)を会長にすることで、国会で受信料の大幅値上げと衛星受信料の新規設定が承認されました」=不正確

島桂次会長時代(1989年4月〜91年7月)に受信料が大きく値上げされたというのは正しい(1990年にNHK受信料(カラーテレビ月額)が1040円から1370円に値上げ。衛星テレビ受信料(カラー月額2000円)も1989年に新設され、1990年に2300円に値上げ)。ただし、海老沢勝二会長時代(1997年7月〜2005年1月)には値上げされていなかった(総務省資料、朝日新聞作成のグラフ参照)。

ちなみに、近年は消費増税に伴う値上げ(1997年、2014年)があったものの、2012年に値下げがあり、今年10月も実質値下げ(消費増税に伴う値上げを見送り)が行われている。

②「(平成14年以降)NHK職員の人件費は年々増額され続け、今では約1万人のNHK職員に対して、年間で1754億円(NHK職員一人平均1750万円)の人件費が使われています。」=不正確

平成29年度の約1752億円の人件費が発生しており、NHK職員数も約1万人程度であったので、その点は間違いない。だが、「NHK職員の人件費は年々増額してきた」という主張は事実と異なる。詳しくは、ファクトチェック記事「立花氏主張『NHKの人件費は年々増加』は不正確」で検証したので、参照されたい

なお、今回の参院補選でファクトチェックを行うにあたっては、IFCNの原則にのっとり、特定候補に偏らず両候補を同じ基準で検証するよう努めた。結果的に検証した言説の数に違いが生じたのは(上田候補6つ、立花候補2つ)、立花候補の選挙公報に検証可能な事実について述べた言説が少なかったことによる。

(冒頭の写真は宮原ジェフリー)

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