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[参院選FactCheck] 検証 消費税(3) 年間で月収1ヶ月分の負担になるか?

参院選ファクトチェック消費税問題シリーズの3回目。8%から10%への消費増税で1ヶ月分の月収が消えるといった指摘が相次ぎ、ツイッター上で拡散している。しかし、様々な試算は、年収200万円以上の税負担は1ヶ月分の月収に満たない結果を示している。(楊井人文)


対象言説

2014年総務省の調査をもとに、試算をしました。消費税が10%になった場合、年間で約1カ月分の所得が消えることになります。つまり、消費税を廃止にした場合、1カ月分の給料をあなたにお返しするイメージです。(山本太郎・れいわ新選組代表、政見放送より)

消費税が10%に再増税されると年収240万円の人は年間の消費税が20万円を超えると試算されました。(ブロガーのTwitter7/12投稿、5600RT超=掲載時点)

参院選で消費税10%を掲げている自民党が勝てば、10万円で9万円のものしか買えなくなる。余裕のない生活の場合、一年に1ヶ月分以上の給料が消費税に消える。1ヶ月以上タダ働き。(映画評論家のTwitter7/15投稿、6900RT超=掲載時点)

検証結果

判定(レーティング):

不正確

(レーティングについては、FIJサイト参照)

根拠・理由:

消費税の年間負担額(負担率)については、様々な試算が出ている。

日本経済新聞の特設サイト「年収でこんなに違う 所得・消費税、あなたの負担は」(2016年2月公開)の試算によると、税率10%での税負担割合は、年収200万円未満だと8.9%でほぼ月収1ヶ月分であるが、それ以上の年収だと負担割合は減っていき、年収400万〜500万円だと4.7%(月収の約56%)、年収600〜700万円だと4.0%(月収の約48%)となる。

(筆者作成)

公益財団法人中部圏社会経済研究所の経済レポート(2018年12月)の試算をみてみる。平均的な家計(年収609万円)だと消費税負担額は年間約25万円(税率10%・軽減税率あり)で、月収換算だと約0.5ヶ月分の負担となった。年収200万円未満だと月収約1ヶ月分の負担となるが、それ以上の年収だと負担率は減る。

もう一つ見てみよう。消費税に反対の立場を示してきた日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」も試算している。下のグラフを見ればわかるとおり、年収200万円未満だと負担が10%を超え、月収1ヶ月分以上となる。だが、年収200〜300万円だと負担が約7%で月収1ヶ月分を下回る。

このように、3つの試算(日経、中部圏社会経済研究所、しんぶん赤旗)を調べた結果、いずれも200万円以上の年収層の消費税の年間負担率は8%未満(月収1ヶ月分未満)であった

山本太郎事務所の試算とは

山本太郎事務所にも「2014年総務省の調査をもとに、試算をしました。消費税が10%になった場合、年間で約1カ月分の所得が消える」との発言の根拠を質問した。

担当者によると、試算は総務省の全国消費実態調査に基づき同事務所が独自に行ったものだという。月20万円、30万円、40万円の消費を行ったときの年間の税負担額を算定すると、それぞれ22.8万円、34.2万円、45.6万円となり、これらの数値から「およそ月収1ヶ月分になる」と考えたという。

ただ、この説明を前提とすると、「月30万消費した人は年間で34.2万円を税負担し、月収1ヶ月分を負担している」ことになり、34.2万円×12ヶ月分=年収410万円の人を想定していることになる。日経新聞など上記3つの試算では、年収400万円台の消費実態を踏まえた税負担率は4〜5%とされており、同事務所の算定とかなり乖離がある。

(山本太郎事務所提供)

また、「しんぶん赤旗」には「年収240万円で年間20万円超 消費税は収入の丸1カ月分」という記事があり、これも「月収1ヶ月分の負担」説の拡散に影響したとみられる。

しんぶん赤旗に問い合わせたところ、編集局経済部の記者は、この記事は税理士が街頭演説で発言した内容を報じたただけで、同紙の見解や試算ではないと回答した。この税理士も取材に対し、ある個人の家計記録から算出したという記事を読んで引用したもので、統計的に試算したものではない、と答えた。したがって、この記事は「消費税負担が月収1ヶ月分」の根拠とならない。

結論:

どの試算をみても「低収入ほど負担割合が大きくなる」という消費税の「逆進性」が現れており、年収200万円未満の人は月収1ヶ月分以上の負担になると試算されるため、全くの誤りとは言えないが、年収200万円以上の人は月収1ヶ月分を下回る結果が出ている。よって、「不正確」と判定した。

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