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沖縄の米軍負担で翁長氏指摘の「70.3%」は事実 沖縄県知事選ファクトチェック

  • NPOニュースのタネ編集長、立岩陽一郎の論評

翁長氏の発言の中で数字が微妙に変わっているように、少しずつだが、返還が実現していることも間違いない。ただ、12都道府県で最も米軍施設が置かれている青森県でも比率が9.02%でしかないことを考えると、その差は歴然としている。因みに、安倍総理の地元である山口県の比率は、3.29%だ。

私は1991年から1996年までNHKの記者として沖縄に駐在していた。当時、翁長氏は自民党の県議会議員で、取材を通じて付き合いが有った。

翁長氏は保守から革新に変わったと評する人がいるが、それは事実ではない。翁長氏は自民党県議だった当時から、「在日米軍が日本全体を守っているのであれば、その負担は全国が等しく引き受けるべきではないか」と語っていた。

翁長氏は、2015年5月の沖縄県民大会で、「日米安保体制、日米同盟というものは、もっと品格のある、世界に誇れるものであってほしい」と語っている。翁長氏は少なくとも、反安保といったスタンスでも語っていない。

翁長氏が語ったものは、「日米安保体制が重要だと言うなら、それを沖縄に押し付けるな」という一言に尽きる。その点は、保守も革新も間違えてはいけない。どちらかに都合の良い言説を流布することは控えるべきだろう。

ここで考えたいのは、なぜ沖縄に米軍専用施設が集中する状況は改善されないのかという点だ。それは、実は簡単な話で、施設を返還する条件として、代替施設の提供が常に米側から求められているからだ。

その代表例が普天間飛行場であることは勿論だが、その他にも那覇港湾施設などがある。既に返還で日米政府が合意しているが、代替地の準備に時間がかかって返還が実現していない。そして、代替地が沖縄県内でとなるから、いつまでたっても沖縄県の求めている比率の減少が実現しないのだ。

そもそも、なぜ沖縄県に米軍が集中するのかについて、沖縄県が極東の安全保障の要石だという指摘がある。米軍がそういう認識に立っていることは間違いないが、これをあたかも「事実」として語るのは正しくない。それは、あくまで米軍の見方というだけのことだ。

更に言えば、その結果として米軍施設が沖縄県に集中した経緯は、沖縄県が1972年まで米国の施政権下にあったという事実と無縁ではない。

一橋大学大学院で沖縄の社会、政治を研究する坂下雅一特別研究員は次の様に話す。

「米国の施政権下時代、特に1940年代から50年代にかけての沖縄では居住地の強制接収による大規模な基地建設が進められました。大きな政治的な争点となっている海兵隊もこの時期本土に駐屯していた部隊を沖縄に移駐させたものです。その後、本土では日本政府の働きかけもあって米軍専用施設の面積は1970年代までに大きく縮小したのに対し、沖縄ではわずかな面積の米軍施設の返還しか進みませんでした。この「格差」に沖縄の人たちは日本政府の「熱意の差」を敏感に感じるわけです。米軍専用施設の7割が沖縄に集中しているという数字は、この歴史的経緯をわかりやすく示すものと言えます」

沖縄県知事選挙は、投票権を持たない本土の多くの人にとっても他人事ではないということ、日本のあり方の問題だということを考えなければならない。これは保守、革新といったどちらの立場の人間にも強く言いたい。

〈参考資料〉

沖縄県知事公室基地対策課

渉外関係主要都道府県知事連絡協議会

防衛省

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