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総選挙ファクトチェック 安倍総理が解散理由で語った税収増「5兆円強」は本当か?

過去、消費税は2度引き上げが行われている。その状況を調べてみた。

最初は1997年。3%から5%(4%が国税)に引き揚げられている。この時は、実際に増収となった額は3.2兆円で、予測値を1兆円余り上回っている。

そして、2度目の引き上げは2014年で、この時は5%から8%(国税分が6.3%)。この時の国税分の増収額は5.2兆円だったが、予測は6.21兆円。実は1兆円余り予測を下回っている。

これについて京都大学大学院の西村周三名誉教授(経済学)は次の様に話した。

西村周三京都大学大学院名誉教授
西村周三京都大学大学院名誉教授

「最初の消費税の引き上げ時は、その時に給与の引き上げも行われたため、引き上げによって消費動向が影響を受けなかったのです。それと、3%から5%というのは、それほど大きな負担を感じさせるものではありませんでした。一方で、2度目の引き上げの時は、景気が十分に回復する前に行われたので、消費者に負担感を強く感じさせるものとなりました」

では、2019年10月に行われる予定の今回の引き上げは、どちらに状況は近いのだろうか?西村名誉教授は次の様に話した。

「消費の動向を予測することの重要性を否定はしませんが、実際にはそう簡単なものではありません。労働分配率という指標を使ってみれば暫くは景気が減速する状況にはないとも言えますが、それも明確に言えるものではありません。経済学者の視点から言うと、予測値はあくまでも予測値です。これをもって、あたかも実際に5兆円強の税収が有るかのように話すのは難しいかと思います」

今回の消費税の増税に合わせて、軽減税率が適用される。このため、飲食料品は消費税増税の対象からは外れることになる。これをもって即、予測値を下回るとは言えないだろうが、過去の事例よりも不確定要素が増えるため、予測は更に困難になるとも言える。

東京オリンピック・パラリンピック2020(東京都HPより)
東京オリンピック・パラリンピック2020(東京都HPより)

勿論、予測を裏付けるような要素もある。その最も大きなものが東京オリンピックであることは間違いない。例えば、みずほ総合研究所は、2020年に訪日する外国人を3629万人と試算している。そして1人当たりの消費額は17万5000円と見積もっている。これによる消費の総額は6兆3000億円となる計算だ。消費税が2%上がって10%となれば、消費税額は6300億円となる。これは大きな額だが、実際には外国人の買い物は免税扱いとなるものも大きい。仮に、この数字が正しかったとしても、そのまま6000億円を超える消費税収が期待できるわけではない。そう考えると、マイナス要因が大きくなった場合、それでも消費税額の増額を下支えする要因になると考えるのは難しい。

つまり、安倍総理が語った「5兆円強」は予測値でしかなく、解散の理由として挙げられた消費税の使途を議論する上で最も重要な数値だけに、慎重な表現をするべきだった。

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