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311緊急シリーズ「福島第一原発事故から6年」   「甲状腺がん多発 − 被曝の影響は本当に無いのか?」前編

●検討委員会が「考えにくい」という根拠

「検討委員会」は、2016年3月の「中間取りまとめ」で、統計から推計される数の数十倍の甲状腺がんが発見されたことを認めた。そのうえで、「放射線による影響とは考えにくい」という評価をこれまでずっと変えていない。評価に際しては、やはり小児甲状腺がんが多発したチェルノブイリ事故の被災地と比較して、以下の4つの根拠から判断したという。

①事故当時5歳以下からの発見はない

②地域別の発見率に大きな差がない

③被曝からがん発見までの期間が概ね1〜4年と短い

④被曝線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて少ない

①と②については、すでに5歳児以下から発症しており、地域差があるという疫学調査結果があるので扱わず、ここでは③と④の根拠に問題があることを指摘していきたい。

●チェルノブイリも福島も甲状腺がん増加は翌年から

日本では、「チェルノブイリでは事故の4〜5年後に小児甲状腺がんが発症し始めた」という説が、政策決定に関わる専門家の間で共通認識となっている。そのため、報道によって世間一般にも広まった。

「検討委員会」もこの説を前提にして、根拠③の「福島では被曝からがん発見までの期間が1〜4年と(4〜5年後よりも)短いので、チェルノブイリとは異なる。だから、放射線の影響とは考えにくい」としている。

しかし、実際はチェルノブイリでも、事故の遅くとも翌年から増加していたことが報告されている。

いくつか例を挙げよう。


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