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トランプの米国とどう向き合うか? (6)~トランプ米次期大統領に情報機関は何を語ったのか?

そこには、プーチン大統領は過去にロシアとビジネスをしようとした西側のリーダーをいいように使ったとして、イタリアのベルルスコーニ首相とドイツのシュローダー首相の名前が記されていた。ベルルスコーニー首相はその後訴追され、シュローダー首相は退陣後、ロシアの企業の顧問になったことで批判にさらされた。

「(トランプに)これを突き付けて、『次期大統領閣下、あなたも彼らのようにプーチンにいいようにやられておしまいですよ。以後、お気を付けください』と言われたんだろう」

「それは、推測か?それとも信ぴょう性の有る話なのか?」

彼はその問いには答えようとはしなかったが、自信あり気に笑ってこう続けた。

「考えても見てごらん。CIAとFBIとNSAの幹部が首を揃えて、『次期大統領、ここは互いに誤解のないようにクリアにしておきたい…』とやるんだよ。勿論、そこには報告書をバックアップする写真もビデオも用意されている。そんな生易しい話じゃなかったと思う」

今更ではあるが、米国人にとって大統領というのはそれが誰であろうと敬意を払われるべき対象であり、それは大統領になる本人にとっても同じだ。トランプ氏にとっても、「プーチンにうまく利用された大統領」が存在したという歴史的事実は耐え難いものになるだろう。何よりも、「アメリカを偉大に」という彼のスローガンと矛盾することは間違いない。

参考記事:トランプ氏が「カード」にする米軍おもいやり予算

その後トランプ氏の言動からロシアとの関係を強調するような目立ったものが出ていない背景には、情報機関の極めて丁寧な一言が有った・・・これは、単なる推論ではないのかもしれない。恐れを知らない言動で選挙に圧勝したトランプ氏を黙らせたのが情報機関の一言だとしたら、それはそれで恐ろしい米国の一面を見る気もする。報告書の概要と言えども公表に踏み切ったのは異例だと言われている。オバマ政権としては、毒を持って毒を制すという心境だったのかもしれない。


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