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「留学生」という名の奴隷労働者たち2   ブローカーの嘘と日本語学校のボッタクリ  出井康博

「月に20~30万円稼げる」。そんな甘い言葉に乗せられて、留学生として日本を目指すベトナム人が急増している。その数はこの5年で約10倍増え、年5万人近くに上る。彼らの大半は、来日費用の返済と学費を稼ぐため深夜働き詰めの生活だ。日本への送り出しブローカーと、一部の悪徳日本語学校に食い物にされ「奴隷労働」を強いられているベトナム人留学生の実態。長期取材した出井康博の報告の二回目。(アイ・アジア編集部)

フーンさんの暮らす日本語学校の寮
フーンさんの暮らす日本語学校の寮(撮影:出井康博)

 

◆バイト紹介手数料まで取る日本語学校も

「カイシャ(日本に留学を斡旋するブローカー)に騙されました…」

東京都内の日本語学校に通うベトナム人留学生のフーンさん(20歳)が、拙い日本語でつぶやくように言った。

彼女はベトナム南部ニャチャンの出身だ。両親は農業を営んでいて、きょうだいは兄2人と姉がいる。兄の1人はパキスタンの建設現場で出稼ぎ中だ。フーンさんが日本に「留学」したのも出稼ぎが目的だった。

彼女を日本へと送り出すため、家族は田畑を担保に入れて約150万円を借金した。日本語学校に支払う初年度の学費が70万円、それに半年分の寮費に18万円、他にはブローカーへの手数料や渡航費などである。

150万円といえば、フーンさん一家の年収の7年分にも相当する。そんな借金を厭わないのも、彼女からの仕送りを期待してのことだ。ブローカーからは「日本でのアルバイト先は日本語学校が紹介してくれる」と聞いていた。しかし、話は少し違った。

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