インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

模擬原爆:原爆を落とす訓練のためだけに一般人に落とされた爆弾③

では、日本上空ではどのような訓練が行われていたのか。日本各地に落とされた模擬爆弾は長崎に投下されたファットマン型の爆弾だ。それは、中身を通常の高性能爆弾に簡単に詰め替えることができるからだ。工藤さんは、「原子爆弾投下の任務遂行に際して操縦や目標の確認が容易にできるように、第509群団の戦闘要員にこれらの都市を周知させる必要があった。しかし、原爆投下候補地は避けて選定されていた。同時に、高度の高い位置を1機で飛ぶB-29の姿を日本人に見慣れさせ怪しまれないようにするという目的もあった」
工藤さんの説明の後、各地での被害の実態や記録を残す取り組みが報告された。

模擬原爆が落ち死者3人がでた北多摩郡(現・西東京市)で、継承活動をしている都丸哲也さん(94)は「私の住んでいる地域には、模擬原爆が投下され、農作業をしていた女性3人が亡くなった。重症者8人、軽傷者も3人の被害が出た」と述べた。記録によると、亡くなった女性の内、2人が自分の子どもを自分の体の下に入れ、子どもを守るために亡くなったということだ。子どもは1人が重症を負い、もう1人が軽傷だったが命は助かったとある。

都丸さんは、模擬原爆は原爆の悲劇の1つだとして、この問題を次の世代に引き継いでいくことにしている。(続く)

Return Top