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野々村元県議の疑惑、何が問題? 上脇神戸学院大教授に聞く

アイ・アジアでは4回にわたって野々村竜太郎元兵庫県議会議員の政治と金について伝えてきた。問題となった政務調査費・政務活動費については、収支報告書を全て入手して公表し(2011-2013年度分)、野々村氏の使途が徐々に大胆になっていったことを報告、また政治資金収支報告書についても、収支の内容に不自然な記載があることを指摘して。支出があることを指摘した。一連の野々村元議員の報告書の問題点について、市民グループ「政治資金オンブズマン」の共同代表として政治資金を長年見続けている神戸学院大学の上脇博之教授に話を聴いた。(鈴木祐太)

神戸学院大の上脇博之教授 撮影 鈴木祐太
神戸学院大の上脇博之教授 撮影 鈴木祐太

Q野々村元議員の政務調査費・政務活動費の違法性は?

まず、条例では領収書の写しを提出するのが原則ですから、野々村元議員の場合、頻繁に視察に行ったとされる交通費の支出について領収書の写しが1枚も提出されていなかったのは、条例違反で違法です。
また、JRの特急券などを自動券売機で購入しながら領収書が発行されるとは知らなかったと弁明しているのは、視察そのものが嘘のカラ視察だったのではないかと疑われても仕方ないでしょう。その上、年度末に大量の切手を購入するのは不可解ですから、実際に使用する目的ではなく換金されているのではないかとの疑いも生じます。そのほかスーパーマーケットでのクレジット支払いなど私生活のために支出していたのではないかと疑われるものもあるようです。つまり、公金である政務調査費・政務活動費を自分のポケットマネーにし、私物化したとの疑惑であり、実際そうだとなると、支出そのものが目的外支出であり違法になります。

Q野々村元県議の問題を我々はどう考えなければならないのでしょうか?

第一の問題は、条例が厳正に運用されていない問題です。領収書の写しが1枚も提出されていなかったのに違法として対処されていません。また、条例によると、県議会の議長には、政務調査費・政務活動費の支出につき調査権がありますが、これが行使されていないという問題もあります。もし、議長がこの調査権を初期の段階で行使していたら、野々村元県議も問題のある支出を大胆にすることはなかったでしょう。
第二は、条例そのものの不備の問題です。政務調査費・政務活動費の支出の報告は、公金なのに1枚の報告書で済ますことができるようになっており、各項目の支出額と主要な支出を備考欄に記載するだけです。個々具体的な支出を全て記載することが義務づけられていません。私的なカネである政治資金の収支報告よりも透明性がないのは問題です。条例改正して改善されるべきです。
第三の問題は、公金が議会の活性化のために役立てられていないという民主主義の問題です。政務調査費・政務活動費は、議員や会派の公的な活動のために交付されており、それを通じて議員や会派の政策能力や行政に対する監視力を高めるべきものです。にもかかわらず、これが私物化され、公金がその本来の役割を果たしていなかったとなると、議会制民主主義にとって深刻な問題です。政務調査費・政務活動費は不適切または違法な支出がなければ、それで良い、ということにはなりません。議員や会派の能力を高め、議会の活性化のために役立てられなければならないのです。この点では、野々村元県議が返金しているから問題が片付いた、ということにはならないのです。

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