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中国を脅かす過激犯罪!多発する背景には何が(前篇) 宮崎紀秀

北京の裁判所に出廷する冀中星被告
北京の裁判所に出廷する冀中星被告

●冀の実家を訪ねる

しかし裁判では、彼の主張は判決には反映されなかった。そして一か月足らずの審理を経た一審判決は懲役6年。さらにその一か月余り後に言い渡された上訴審でも一審の判決が支持された。中国は二審制だ。冀の懲役6年の実刑判決は確定した。

私は、山東省の農村にある冀の実家を訪ねた。一審判決の出た8日後のことだった。実家には父、62歳の冀太栄(以下、太栄)がいた。太栄は、私の姿を見ると、「6年の刑なんて・・・。下半身も感覚がなく、耳も聞こえなくなったのに」と、おいおいと泣き崩れた。太栄は、息子は家で動くこともできず、その無念を晴らしに行ったのだ、と涙ながらに訴えた。
「体は床ずれだらけ。殴られてそうなったのに。この7、8年、誰も無念を晴らしてくれなかった」。

実家の庭には、母屋とは別に白いプレハブがあった。赤茶けた土地の埃っぽい農村には不釣り合いな仮設住居のようにも見える。少し高くなった入り口と、庭のむき出し土の表面とを、セメントを流して作ったスロープが繋いでいる。半身不随となって実家に戻ってきた息子のために、太栄氏が建てた部屋という。

部屋の中は、長方形の会議室くらいのスペース。ベッドと麻雀卓、乗り手のいなくなった車椅子が目に入った。ベッドには、綿のはみ出た布団。床ずれの膿みが至る所に染みていた。

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