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福島第一事故の被害規模は本当にチェルノブイリ事故の7分の1なのか?(上) 帯刀良(ジャーナリスト)

3つの原子炉がメルトダウンを起こすという未曽有の事故から2年半余り。汚染水問題で深刻の度合いを増す福島第一原発だが、常にチェルノブイリ事故との被害規模の比較で「7分の1」という表現が既成事実として使われている。つまり、「チェルノブイリ事故と比べれば事故の規模は小さい」という意味だ。しかし、ここには事故を過小に見せようという日本政府のまやかしが見え隠れする。

この「7分の1」というのは、福島第一原発1号機、2号機、3号機のメルトダウンによって大気中に放出された放射性物質の量を比較して導いたものだ。新聞やテレビなど、多くのメディアもこれに倣っている。
そこには説明もついている。

撮影日:2013年5月17日  撮影:帯刀良
撮影日:2013年5月17日  撮影:帯刀良

曰く、「チェルノブイリの原発には原子炉格納容器が無かったから原子炉の爆発によってそのまま大量の放射性物質が散ったが、福島第一の3つの原子炉は何れも原子炉格納容器(以下、格納容器)に守られており、大気中に放出された放射性物質の量は限定的なものだった」。
しかし実は、ここにまやかしがあった。

まずチェルノブイリ事故によって大気中に放出された放射性物質の総量を見てみたい。IAEAが国連の機関を総動員して1986年4月段階でまとめた報告書によると、それは1万4000ペタベクレル(正確には1万3650ペタベクレル)となっている。

この報告書は2012年に日本学術会議が翻訳している。そこには以下のように書かれている。


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