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<橋下市長>特別秘書奥下氏の疑惑に市民が監査請求

◆業務内容記録ゼロ 休職して選挙活動しながらボーナス支給
(アジアプレス編集部)
橋下徹大阪市長に、とうとうお膝元の大阪市民が立ち上がった。橋下市長が条例を制定して採用した特別秘書の存在について、仕事の内容が不透明であり不当に高額の給与が支払われているとして、2013年2月13日、大阪市民が住民監査請求の申し立てを行ったのだ。

橋下徹大阪市長

橋下徹 大阪市長(撮影 粟野仁雄)

申し立てを行ったのは、大阪市在住の79人。申し立ての内容は、以下の3点を橋下市長に求めるものだ。
1 不当な条例によって採用した特別秘書に支払った給与、手当、賞与などの全てを秘書から返還させる。
2 仮に条例が不当でなかったとしても、特別秘書が大阪市の公務に従事していなかった間の給与、手当、賞与の相当分を返還させる。
3 特別秘書に対して、今後、給与、手当、賞与など一切の費用の支給をやめる。
この特別秘書とは、2012年1月に橋下市長が新たな条例を制定して採用した奥下剛光氏のことだ。この奥下秘書の業務内容についてNGO「政治資金オンブズマン」が大阪市に情報公開請求を行ったところ、出勤状況や業務内容を記した文書がまったく存在しないことが判明している。奥下氏を採用した理由について記した文書も、これまでに参加した会議や行事の記録も残されていないということだった。
一方で、奥下秘書には巨額な給与、賞与が大阪市職員として支払われていることが判明している。大阪市がNGO「政治資金オンブズマン」の情報公開請求に対して明らかにしたところによると、奥下秘書の給与は月額35万円余り。それに手当が加算される。そして問題なのは賞与だ。採用からわずか4カ月後の夏のボーナスで、満額とも言える80万円余りが支払われている。また、昨年末の衆議院の選挙期間中は休職扱いとなっていたにもかかわらず、昨年の冬のボーナスでも、74万円余りが支払われている。
つまり、申し立てを起こした大阪市民は、採用の理由や業務の内容が不明確な奥下氏への給与の支払いを停止し、既に支払った給与を市に返還させるよう橋下市長に求めているのだ。当然、要求の根底に有るのは、行政の無駄遣いをやめて欲しいというものだ。
この行政の無駄を無くすというのは、橋下市長が大阪府知知事時代から専売特許のように繰り返してきたセリフだ。それこそが、橋下市長の人気を支えてきたと言っても過言ではない。橋下市長がどのように対応するのか注目される。
一方、奥下秘書の採用そのものに不可解な点が有ることも事実だ。そもそも奥下秘書とその親族は橋下市長の大阪府知事時代からの最大の後援者と言ってよい存在だ。

住民監査請求の最初のページ

※ 詳細資料 (PDFファイル)
住民監査請求書
公開請求に対する大阪市の「不存在による非公開決定通知書」
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2008年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2009年度分
「橋下徹後援会の政治金収支報告書」 2010年度分
橋下市長の後援会組織である「橋下徹後援会」の収入を2008年から2010年までの3年間について調べると、その8割強がパーティー券の斡旋によるものとなっている。そしてそのパーティー券の斡旋の大半を担ってきたのが奥下秘書とその親族なのだ。この斡旋によって、大阪府知事だった当時の橋下市長のパーティー券を直接購入した人の名前は政治資金収支報告書に記載されなくなっている。斡旋した奥下秘書とその親族の名前だけが、記載されるからだ。違法ではないが、NGO「政治資金オンブズマン」共同代表で神戸学院大学の上脇博之教授は、法の抜け穴を使った手法ではないかと指摘している。
「これまでいろいろな政治家の政治資金収支報告書を調べてきたが、このような高額なパーティー券の斡旋は極めて稀で、見たことがない。政治資金収支報告の制度は、金額の上限内でパーティー券の購入や寄付が認められ、パーティー券の購入者や寄付者の氏名等が記載されることで政治資金の透明性を確保するものだが、斡旋は上限の定めが無いため、斡旋した者が数千万円のパーティー券代を集めて政治団体に提供できることになっている。だが、普通、高額な斡旋は簡単にできるものではない。本当にこのような斡旋が行われたのか、誰がどのように購入したのか全てが不明になる」
橋下市長は、後援会の有力者を側近に登用するために新たな条例を制定してまで特別職の秘書を採用させたのだろうか。そして、採用された奥下秘書はどのような業務を担ってきたのか。橋下市長に説明責任が有ることは間違いない。

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