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総選挙ファクトチェック 安倍総理の解散理由に「事実と異なる内容」

職業別の状況を見ずに、有効求人倍率を語ることはできない。

私たちは、厚生労働省が別にまとめた「職業別労働市場関係指数」を調べた。これは、パートを省く全ての職種についてまとめたものだ。正社員も契約社員も含まれている。

ハローワーク

この資料でも、有効求人倍率は1.28倍(2017年8月13表)となっている。ここでも、誰でも職に就くことができる状態となっていることは間違いない。ただし、そこには職種によって大きなばらつきがあった。

以下に、倍率の高い、つまり職に就ける可能性の高い職種を挙げた。

  • 保安(警備業務など)   7.3倍
  • 建設職業 4.26倍
  • 介護サービス 2.96倍
  • 自動車運転(タクシーの運転手など) 2.69倍

これらの職業はこの国を支えるものであることは間違いなく、何れも過酷な労働環境から、もともと人手不足が指摘されている職種でもある。

その代表的なものが、介護サービスだ。この資料の2.96倍の数字の詳細を見ると、有効求人数が全有効求人の1割にあたる約11万5000人だった。しかし、求職数は約3万8000にとどまっている。これは、1人の介護士にかかる過重な労働に反して支払われる給与の低さが原因となっており、安倍総理自身が解散の理由の中でこの点を指摘し、改善の必要性を強調しているものでもある。

一方、ホワイトカラーの職業である事務的職業の有効求人倍率は0.4倍にとどまっている。

安倍総理の会見での発言は、正社員についてのものであり、これらは参考値に過ぎない。しかし、その状況が大きく異なることを示す資料はない。それらを勘案すると、誰もが正社員になれるという言葉は現実を語っているとは言いがたい。

このため、「この2年間で正規雇用は79万人増え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来初めて1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、かならず1つ以上の正社員の仕事がある」との安倍総理の発言は、「発言に根拠は有るものの、その内容は必ずしも事実とは言えない」との判定となった。

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