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総選挙ファクトチェック 希望の党の「企業の内部留保300兆円に課税して代替財源」は「事実と認めるには不確かな要素がある」

総選挙ファクトチェック 希望の党の「企業の内部留保300兆円に課税して代替財源」は「事実と認めるには不確かな要素がある」

「ニュースのタネ」は総選挙ファクトチェックを行っており、これまでに安倍総理の解散記者会見での発言や日本維新の会の松井一郎代表の発言について事実の確認を行ってきた。希望の党が、大手企業の内部留保300兆円に課税することで消費税の引き上げ分を賄えるとしていることについて、「事実と認めるには不確かな要素がある」と判定した。これはニュースのタネのファクトチェック判定で、「エンマ大王度1」にあたる。(立岩陽一郎)

小池代表は、10月6日に東京都内で記者会見を開き、希望の党の公約を発表。その中で公約担当責任者の後藤祐一前議員が次の様に発言している。

「消費税増税凍結については、「では財源をどうするのか?」ということについては、我々は逃げるつもりございません。資本金1億円以上の企業の内部留保というものが300兆円ぐらいある。これに対して課税をすることで代わりの財源にしていく」

安倍総理は消費税の引き上げによって得られる5兆円強を少子高齢化などのために使うとして、その信を国民に問うために解散を行ったとしている。会見での発言は、この「5兆円強」について大企業の内部留保に課税することで得られるとしたものだ。これによって消費税の引き上げそのものを凍結できるとしており、自民党との対立軸を形成する重要なポイントとなっている。

300兆円もの資産であれば、1%の課税でも3兆円の税収が有ると考えられ、魅力的なものに見える。小池代表は、税率を仮に2%とすれば6兆円の税収が有るとも発言している。

この発言をめぐっては麻生太郎財務大臣が「二重課税になる」と実現性を疑問視しているが、ニュースのタネは、制度的な問題よりも、この「資本金1億円以上の企業の内部留保」の「300兆円ぐらい」が、どういうものかファクトチェックした。

先ず、財務省がまとめた法人企業統計の去年の数値をみると、「利益剰余金」という項目がある。その中で、金融・保険を含む数値を見つけた。その中の資本金1億円以上を足し上げると、308兆円という数字が出てきた。

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財務省主税局で法人税を担当する税制3課に問い合わせた。

「企業の内部留保という統計は無いが、恐らく、その308兆円という数字について語っているのだろう。それ以外に該当するような数字はない」

308兆円の内部留保というのは、課税が可能なものなのだろうか?

「現在は法律が無いので、新たに法律を制定するということになるので、国会で議論をして頂くことになる。ただし、308兆円はあくまで数字上のものであって、その資金が企業に貯められているわけではないので注意が必要だ」

どういうことだろうか?

「これは会計上の数字であって、仮に企業が設備投資をして資金を使っていても減価償却分程度が資産から減らされるだけで、この数字に反映されないんです」

つまり、数字に記載されている308兆円がそのまま手付かずで残っているわけではないということだ。

「内部留保」の発言は選挙の公約の説明で行われているもので極めて重要なものだ。しかしそれを裏付けるものは十分に示しておらず、この発言については、「事実と認めるには不確かな要素がある」と判定せざるを得ない。

ニュースのタネはファクトチェックを以下のエンマ大王の度合で判定している。

エンマ大王度 ゼロ 事実

エンマ大王度 1 事実と認めるには不確かな内容がある

エンマ大王度 2 発言に根拠は有るものの、その内容は必ずしも事実とは言えない

エンマ大王度 3 事実ではない

エンマ大王度 4 真っ赤な嘘

従って、今回の会見での発言は、「エンマ大王度1」となる。

ニュースのタネは、安倍総理が解散理由で述べた「5兆円強」についてもファクトチェックを行っており、今回同様、「事実と認めるには不確かな要素がある」で、「エンマ大王度1」と判定している。

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